2026.07.09
「2科目受験」という道もある — 夏、しんどくなってきたご家庭へ
こんにちは、坂本七郎です。夏休みに入ると、毎年決まって私のもとに届く相談があります。「うちの子、4科目の勉強量に、正直ついていけなくなってきました……」というものです。国語・算数・理科・社会。塾の夏期講習はどの科目も一段と分厚くなり、宿題も一気に増えます。真面目に机に向かっているのに、範囲が広がるスピードに、子どもの体力と気力が追いつかない。そんな夏を、私はこれまで何度も見てきました。
一方で、同じ4科目を涼しい顔でこなしていく子もいます。同じ学年、同じ塾、同じカリキュラムのはずなのに、この差はどこから来るのでしょうか。今日は、この「頑張れる、頑張れない」という個人差の話から、もう一つの選択肢 — 2科目受験について、私自身の経験も交えてお話ししたいと思います。
「うちの子だけ、ついていけていない」 — そう感じる夏はありませんか?
結論から言うと、多くのご家庭が、この時期に同じ壁にぶつかります。夏休みは学校の宿題に加えて塾の夏期講習、模試、そして苦手科目の補強まで重なり、やることが一気に積み上がる時期だからです。
私のもとに寄せられる相談でも、7月から8月にかけて「勉強量」に関する悩みが目に見えて増えます。「朝から晩まで机に向かっているのに、理科と社会の暗記が追いつかない」「算数の応用問題に時間を取られて、他の科目に手が回らない」。むしろ、真面目に取り組んでいるご家庭ほど、この壁にぶつかりやすいと感じます。
そしてそのとき、多くの保護者の方がまず考えるのは、「もっと頑張らせなくては」ということです。私も、その気持ちはよく分かります。ただ、ここで一度、立ち止まって考えていただきたいことがあります。それは、「頑張れる量」そのものに、実は子どもごとに大きな個人差がある、という事実です。
「頑張れる子」と「頑張れない子」、その違いは何でしょうか?
私は、これは能力の優劣ではないと考えています。その子が生まれつき持っている、使えるエネルギーの総量と、心地よく感じるペースが違うだけだと思うのです。
同じ4科目、同じ勉強時間を与えられても、涼しい顔でこなしていく子もいれば、途中で息切れしてしまう子もいます。これは、どちらが優れていてどちらが劣っている、という話ではまったくありません。長い距離をコツコツ積み上げるのが合っている子もいれば、範囲を絞り込んだほうが力を発揮できる子もいる。ただそれだけのことだと、私は思っています。
実際には、ご夫婦のあいだで、子どもの受験に対する熱量や考え方が違う、というご家庭も少なくありません。片方は「できるだけ多くの選択肢を残してあげたい」と考え、もう片方は「無理はさせたくない」と感じている。そうした温度差があること自体も、私は決して珍しいことではないと思っています。
比べるべきは「よそのお子さん」ではなく、そのお子さん自身の半年前・去年の夏。頑張れる量にも、心地よいペースにも、その子なりの個性があります。
実はこの考え方は、以前このコラムの第1回でお話しした「いちばんの自分になる、という考え方」と、根っこの部分でつながっています。誰かと比べて優劣をつけるのではなく、その子自身のペースで、その子なりの力を伸ばしていく。受験の科目数についても、私は同じ視点で考えています。
4科目でなければ、中学受験は成り立たないのでしょうか?
実はそんなことはありません。国語・算数の2科目、あるいは1科目で受験できる学校は、決して少なくありません。これは、これまで5,000人以上のお子さんの学習に関わってきた中で、繰り返し実感してきたことです。
実は、私自身も2人の子どもの中学受験を経験しました。1人目は、多くのご家庭と同じように4科目で受験に臨みました。ところが志望校を調べていくうちに、国語・算数の2科目、あるいは1科目だけで受けられる学校が、想像していたよりずっと多いことに気づいたのです。そこで2人目のときは、妻ともよく相談したうえで、最初から国語・算数の2科目に絞って受験することにしました。実際にやってみると、これが本当に楽だったのです。理科・社会の暗記に追われることもなく、親子ともに気持ちのゆとりを持って本番までの日々を過ごせました。同じような手応えを口にされるご家庭を、私はこれまで何組も見てきました。
誤解のないようにお伝えしたいのですが、2科目受験は、成績が振るわなかったときの「代わりの手段」ではありません。むしろ、その子に合った学び方を、家族で選び直す「もう一つの道」だと、私は考えています。
2科目受験の具体的なメリット・デメリットや、実際の始め方をまとめた記事をまなぶてらすのブログで公開していますので、興味を持たれた方はあわせてご覧いただければと思います。
科目を減らすことは、「逃げ」になってしまうのでしょうか?
私は、そうは思いません。4科目という土俵から降りるのではなく、その子に合った土俵を、あらためて選び直しているだけのことだと考えています。
科目を減らすと聞くと、「諦めた」「逃げた」というイメージを持たれる方が、今でも少なくありません。私自身、最初はそう考える保護者の方の気持ちが、痛いほどよく分かります。子どものために、できることは全部させてあげたい。その思いから、4科目を手放すことに、後ろめたさを感じてしまうのは、とても自然なことだと思います。
ですが、長年この仕事をしてきて感じるのは、「塾の勉強が本当につらい」「これだけ頑張っているのに、成績が上がらない」と苦しんでいる親子を、無理に4科目のレールに乗せ続けることのほうが、よほど本末転倒だということです。子どもの表情から笑顔が消え、親子の会話が受験の話ばかりになってしまっては、何のための受験か分からなくなってしまいます。
「頑張れない」のではありません。今のやり方が、その子に合っていないだけです。
2科目受験は、その子にちょうど合う重さに、荷物を積み替えるようなものだと、私は捉えています。
この夏、親子で何を話してみるとよいでしょうか?
特別な準備はいりません。まずは、次の3つを、ご家庭で話題にしてみることから始めてみてください。
- 1今の勉強量に、その子は笑って向き合えているか — 真剣な顔と、追い詰められた顔は、傍から見ると意外とよく似ています。
- 2比べているのは、よそのお子さんではなく、半年前・去年のその子自身か — 比較の物差しを、家庭の外に置いていないか、一度確かめてみてください。
- 3科目を減らすという選択肢に、ご両親それぞれがどんな感情を持っているか — 夫婦で温度差があっても、それ自体は自然なことです。
この3つに向き合ってみると、「もっと頑張らせなくては」という気持ちの奥にある、本当の願いが見えてくることがあります。それはきっと、科目数の多さではなく、その子が笑って机に向かえる毎日ではないでしょうか。
2科目受験は、結局どんな選択肢なのでしょうか?
結論から言うと、2科目受験は、特別な子のための近道ではなく、その子に合った学び方を、家族で選び直すための、もう一つの入り口だと、私は考えています。
夏休みは、4科目の重さがいちばん実感されやすい時期です。だからこそ、この時期に一度立ち止まり、「うちの子に合った受験のかたちは何か」を考えてみる価値があると、私は思っています。
2科目受験は、誰にでも勧められる万能な答えではありません。ですが、「頑張れる、頑張れない」に個人差があるのと同じように、受験のかたちにも、その子に合う・合わないがあっていいはずです。
私が代表を務めるオンライン家庭教師「まなぶてらす」でも、200名以上の講師が、それぞれのお子さんに合ったペースでの学習をサポートしています。受験のかたちに悩んだときの考え方については、拙著『中学受験は2科目だけ勉強すればいい』をはじめとするこれまでの著書でも詳しくお伝えしていますので、よろしければあわせてご覧ください。
この夏が、ご家庭にとって、無理のない形での踏ん張りどきになりますように。