学力は「成功」のため?「成長」のため?夏休みに見つけたい子どもの伸び

こんにちは、坂本です。夏休みが始まりました。子どもたちにとっては待ちに待った長いお休みですが、保護者にとっては、毎日の昼食、生活リズム、宿題の進み具合と、気にかけることが一気に増える時期でもあります。

「朝からダラダラしていて大丈夫かな」「宿題は、ちゃんと終わるのだろうか」「せっかくの夏休みだから、何かひとつでも成長してほしい」。そんなふうに思うこともあるのではないでしょうか。長い休みだからこそ期待も大きくなり、つい、できていないことのほうが目につきやすくなります。

子どもには、できればよい成績を取ってほしい。受験では、志望校に合格してほしい。親であれば、そう願うのは自然なことだと思います。私も、点数や合格を否定するつもりはありません。

けれど、教育について考えるなかで、ひとつ気づいたことがあります。それは、学力を「成功」のためのものと見るか、「成長」のためのものと見るかで、子どもへのまなざしが変わるのではないか、ということです。今日はこの2つの見方について、お話しさせてください。

「成功」と「成長」は、どう違うのでしょうか?

テストで90点を取る。志望校に合格する。人より高く評価される。これらは、ある時点での「成功」です。目標として、もちろん大切なものです。

一方で、昨日まで解けなかった問題が解けた。わからないことを、自分から質問できた。うまくいかなくても、方法を変えてもう一度やってみた。これらは、すべて「成長」です。たとえテストの点数に、すぐ表れなかったとしてもです。

成功は一時点を切り取った「点」、成長はそこへ至るまでの「線」。

私はこう考えています。点だけを見ていると、点と点のあいだで子どもの中に積み上がっているものが、見えなくなってしまうのです。

日本の学びは、何を大切にしてきたのでしょうか?

ここからは、教育を考えるための、ひとつの仮説です。かなり大きなくくりではありますが、西洋では、学力が社会で自分の能力を示し、「成功」をつかむための力として発達してきた面があります。それに対して、日本の学びの伝統には、先生が一人ひとりを見ながら、その子を「成長」させることを大切にしてきた面があります。

たとえば江戸時代の寺子屋では、年齢の違う子どもたちが同じ場所で学びながら、一人ひとりの進み具合や家業に合った教材を使っていました。先生が全員へ同じ内容を一斉に教えるというより、子どもが自分で学び、必要なときに師匠が個別に教える形です。

また「会読」と呼ばれる読書会では、身分や年齢を越えて意見を交わしました。相手を言い負かすことよりも、互いに学びを深めることが大切にされていたといいます。

こうして見ると、日本の学びの中心には長い間、緩やかな師弟関係のなかで、一人ひとりを育てるという考え方があったのではないでしょうか。私が教育でいちばん大切にしている「いちばんの自分になる」という旗印も、他人との比較ではなく、その子自身の変化を見るという点で、この伝統と地続きにあると感じています。

好き・得意と、苦手・嫌い——どちらも成長の材料になる?

では、子どもの成長を支えるには、何を大切にすればよいのでしょうか。私は以前から、子どもの学びを「好き・嫌い」と「得意・苦手」の両面で見るようにしています。

好きなこと、得意なことを伸ばす経験は、「自分にもできる」という自信を育てます。その自信が、ほかの学びへ向かう力にもなります。その一方で、苦手なことや嫌いなことに取り組む経験も、決して無駄ではありません。そこでは、粘り強さや工夫する力、人に助けを求める力が育ちます。

大切なのは「一歩前へ進めたか」

どちらか一方に偏ることではなく、その子が昨日より一歩でも前へ進めたかを見てあげること。好き・得意も、苦手・嫌いも、その子の成長の材料になります。

夏休み、子どものどこを見てあげればいいのでしょうか?

テストが返ってきた日、私たちはつい「何点だった?」と聞いてしまいます。その言葉に、もうひとつだけ加えるなら、こんな問いかけはどうでしょうか。

「前より、できるようになったことは何?」

点数だけを見れば、前回と同じかもしれません。でも、途中式を丁寧に書けるようになったかもしれない。見直しをする習慣がついたかもしれない。苦手な問題から逃げずに、最後まで取り組めたかもしれない。

そして夏休みには、点数では測れない成長もたくさんあります。

  • 自分で一日の予定を立てられた
  • 家のお手伝いができるようになった
  • 好きな本や生き物について、とことん調べた
  • うまくできなかった料理や工作に、もう一度挑戦した

こうした経験も、子どもを育てる立派な学びです。夏休みが終わったとき、何ページ勉強したかだけでなく、どんなことに夢中になり、何ができるようになったかにも目を向けてあげてほしいと思います。そうした小さな変化を見つけ、言葉にして伝えることが、次の成長を支える力になります。

まとめ

成功を目指すことも大切です。けれど、その手前にある成長を見失わないこと。そこに、日本の教育が本来持っている強みがあるのではないかと、私は考えています。

子どもの成長は、毎日見ていると気づきにくいものです。とくに夏休みは、親子で過ごす時間が増えるぶん、できていないことも目につきやすくなります。そんなときは、少し前のノートや答案を親子で一緒に見返してみてください。本人も忘れていた「できるようになったこと」が見つかるかもしれません。

この夏、お子さんの成長をひとつだけでも見つけて、ぜひ言葉にして伝えてみてください。私自身も、5,000人以上の学習相談を通して「学力が伸びない子はいない。やり方をまだ知らないだけ」と実感してきました。その原点にある考え方はプロフィールでも紹介しています。

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