2026.08.13
「特別なことは、していなかった」子どもを伸ばす親に共通すること
こんにちは、坂本七郎です。ママ友との会話や、SNSで見かける他のご家庭の投稿。「うちはこんな教材を使わせている」「毎日こんな取り組みをしている」。そうした話を耳にするたびに、「うちは、何もしてあげられていないのでは」と、静かに焦りを感じたことはないでしょうか。
これまで15冊の本を書き、5,000人以上のお子さんやご家庭と関わってくる中で、「うちには、これといった教育方針もなく、ただ日々を過ごしているだけです」と謙遜される親御さんに、何人もお会いしてきました。ですが、そういう方に限って、実はお子さんがしっかりと伸びているケースが多いのです。今日は、そんな保護者の方たちに共通していた、ある姿勢についてお話ししたいと思います。
子どもを伸ばす親には、何があるのでしょうか?
結論から言うと、それは特別な教材でも、環境でも、才能の話でもありませんでした。ある共通する「姿勢」があっただけです。
以前、東大に合格したお子さんを持つ親御さんたちへ、たくさんインタビューをさせていただいたことがあります。何人もの方にお話をうかがう中で、ある共通点に気づきました。それは、謙虚さです。
子どもが志望校に合格したときのことを、その親御さんたちに聞いてみると、口をそろえてこう言うのです。「先生のおかげです」。そして、子ども本人にはこう伝えます。「あなたが一生懸命努力したからだよ」。
送り迎え、お弁当づくり、家事、日々の健康管理、志望校選びのための調べもの、金銭的なやりくり。その裏には、表には見えない保護者の並々ならぬ努力があります。それでも、その苦労を自分からは語らない。これが、子どもを伸ばす親に共通する姿勢です。
不思議に思われるかもしれません。子どもの合格という大きな成果を前にして、なぜ自分の頑張りとして語らないのだろうか、と。ですが、話をうかがっていくと、これは意識してそうしているというより、日々の関わりの中で自然とそうなっていた、という方がほとんどでした。
なぜ、この「謙虚さ」が、子どもを伸ばすのでしょうか?
自分の苦労をいっさい語らず、成果は先生と子どもに手渡す。これができる親のもとで、子どもは自分の力で勝ち取った成果なのだと実感でき、次への自信につながっていくのだと思います。
子どもの立場になって考えてみると、これは自然なことです。テストの点数が伸びたとき、それが「親が横についていたから」「先生に頼りきりだったから」だと感じてしまうと、次に一人で問題に向き合うときの支えにはなりません。反対に、「自分の力でやり切った」と感じられれば、次も自分でやってみようという気持ちが芽生えます。親の役割は、その実感をそっと守ってあげることなのだと、私は考えています。
- 1「先生のおかげです」——自分の苦労を語らず、先生に花を持たせる
- 2「あなたが一生懸命努力したからだよ」——子ども自身の力で勝ち取った成果なのだと伝える
自分をさしおいて、先生や子どもに花を持たせる。これができる親が、子どもを伸ばす親なのです。
だからこそ、いくら苦労や努力を重ねてきても「私のおかげです」とは言わないのです。そして、子どもから「今までいろいろやってくれてありがとう」と言われた日には、誰にも見られず、認めてもらえなかったはずの自分の苦労をわかってもらえたことに、胸がいっぱいになるのだと思います。
では、謙虚さとは、生まれ持った性格の話なのでしょうか?
私がお伝えしたいのは、性格の良し悪しの話ではないということです。日々の、ごく小さな声のかけ方の積み重ねだと考えています。
ここまでの話をすると、「私はそこまでできた人間ではないので……」と、性格や人柄の問題として受け取られることがあります。実際、著書を出してから、こうしたご相談をよくいただくようになりました。「うちの子には特別なことをしてあげられていません」というお悩みです。多くの場合、周りのご家庭が塾や教材で頑張っている様子を耳にした直後に、こうしたお気持ちになるようです。
そんなとき私がまずお願いするのは、これまでの声かけを振り返ってみてください、ということです。テストの点数がよかった日に「頑張ったね」と伝えたこと。習いごとの後に「先生、ありがとうございます」と口にしたこと。特別なことをしていないと感じている方でも、たいてい、こうした場面に心当たりがあります。自分の苦労より先に、子どもの努力を認める。この積み重ねが、結果として「謙虚な親」という共通点に見えているだけなのです。
つまり、性格を変える必要はありません。今日の声かけの順番を、少しだけ変えてみることから始められます。
まとめ — 「特別なこと」を探すのをやめてみる
他の家庭の特別な取り組みを見聞きすると、つい「うちには足りないものがある」と感じてしまいます。けれど、東大に合格したお子さんの親御さんたちも、特別な教材や環境を用意していたわけではありませんでした。子どもを伸ばす親に共通していたのは、成果を自分の手柄にせず、先生と子どもにそっと手渡す姿勢でした。
「特別なこと」を新しく探しに行く必要はありません。すでに毎日続けている送り迎えやお弁当づくり、子どもの話を聞く時間。その中にすでにある関わり方を、少し違う角度から見つめ直してみる。今日は、その視点を持ち帰っていただけたらと思います。
この話の元になった東大生の親御さんたちへのインタビューは、拙著『学力が劇的にアップ! 小学生のための「家庭学習」の教科書』に詳しく書いています。ご興味があれば、あわせてご覧ください。私が代表を務めるオンライン家庭教師「まなぶてらす」でも、こうした親子の関わり方について、日々多くのご家庭からご相談をいただいています。