AIの日本語は、時々おかしい——子どもと生成AIを使う前に整えたい「ことばの設定」

坂本七郎

坂本七郎

こんにちは、坂本です。私は毎日、仕事で生成AIとやり取りをしています。文章の下書き、データの整理、企画の相談——いまや欠かせない仕事の相棒です。ところが最近、そのAIの日本語に、妙な言い回しが混じることに気づきました。「これが刺さるワードです」「ここが主戦場です」。ふだんの会話では、まず使わない言葉です。

AIの日本語は、どれくらい「変」なのでしょうか?

気になった私は、AIに頼んで、これまで仕事で交わしたやり取りの言葉づかいをすべて集計してもらいました。結果は想像以上でした。「本丸」33回、「主戦場」18回、「刺さる」が活用形も含めて23回、「勝ち筋」7回。広告の文句と、戦いの比喩ばかりです。私がそう指示した覚えは、一度もありません。

種明かしをすると、AIはインターネット上の膨大な文章から言葉を学んでいます。ネット広告、SNS、ビジネス記事——そこにあふれる言い回しが、AIの「地の文」に染み込んでいるのです。AIに悪気はありません。ただ、教育に携わる者として、これは聞き流せないと感じました。

なぜ、子どもの「ことばの環境」として気になるのでしょうか?

子どもは、毎日ふれる言葉から日本語を身につけるからです。家族との会話、本、テレビ——そしてこれからは、AIとの対話がその「ことばの環境」に加わります。

株式会社Pifteeが2026年4月に行った調査では、小学3年生から中学3年生の61.2%に、すでに生成AIの利用経験がありました。一方で、AIの使い方について明確なルールを決めている家庭は5.3%にとどまります(小3〜中3の保護者300名対象。出典:小中学生の生成AI利用と調べ方に関する実態調査2026)。多くの子どもたちが、家庭のルールが定まらないまま、あの広告調の日本語を浴び始めていることになります。

大人なら「広告っぽい言い回しだな」と聞き流せます。でも、語彙を増やしている途中の子どもは、目にした言葉をそのまま覚えていきます。以前、AI時代に国語力が大切な理由を書いたコラムで、AIは日本語で動く道具であり、AIをうまく使う力の土台は国語力だという話をしました。その国語力を育てる環境に、乱れた日本語が流れ込むのは、なんとももったいない話です。

ただ、私はこの発見を悲観していません。調べていくうちに、設定をひとつ加えるだけでも、AIの日本語はかなり整えられると分かったからです。

家庭でできる「日本語の設定」とは、どんなものでしょうか?

生成AIには、「カスタム指示」などと呼ばれる設定欄があります。ここに書いた指示は、以後のすべての会話に自動で反映されます。つまり、一度だけ「正しく美しい日本語で答えてください」と設定しておけば、毎回お願いし直す必要はありません

こつは、「俗語を使わないで」という禁止だけで終わらせないことです。AIは禁止だけの指示を忘れやすく、「この言葉は使わない。かわりにこう言う」という言い換えのセットにすると、ぐっと守れるようになります。迷ったときの判断基準を1行入れておくと、例に挙げていない言葉にも応用できます。私が実際に使っている設定文を、そのまま置いておきます。

コピーして使える設定文(大人用)

これ以降、正しく美しい日本語で答えてください。
【基準】迷ったら「新聞やNHKのニュース、国語の教科書にそのまま書ける表現か」で判断する。
【守ること】
・ネット広告調の俗語や誇張を使わない(例:「刺さる」→「心に響く」。「神○○」「爆速」「○○一択」は使わない)
・不要なカタカナ語は日本語で言い換える(例:「ソリューション」→「解決策」)
・文法の乱れを避ける(ら抜き言葉:「見れる」→「見られる」/二重敬語:「おっしゃられる」→「おっしゃる」)
・翻訳調を避けて簡潔に書く(「〜することができます」→「〜できます」)
・絵文字・顔文字を使わない
・です・ます調で、落ち着いた品のある文章にする
俗語や乱れた表現を指摘されたら、言い換えて訂正してください。

子ども用は「国語のお手本モード」に

子どもと一緒に使うときは、もう一歩進めて、AIに「国語のお手本」役をお願いしてしまいます。なお、小学生のうちは保護者のアカウントで、隣に付き添って一緒に使うことが前提です(年齢のきまりは後述します)。

コピーして使える設定文(子ども用)

あなたは小学3年生の子どもと話すAIです。正しく美しい日本語のお手本になってください。
・教科書や新聞に書ける、ていねいな日本語だけを使う。流行語・俗語・絵文字は使わない
・学年に合わせて、やさしい言葉と短い文で話す
・子どもの言葉に間違いがあっても、指摘はしない。正しい形でさりげなく言い直して受け止める(子「きのう見れた」→「昨日、見られたんだね」)
・言葉について質問されたときだけ、理由をつけてやさしく教える
・答えをすべて教えず、最後に、子どもが自分の言葉で考えて書きたくなる問いかけを1つ添える

冒頭の「小学3年生」は、お子さんの学年に合わせて書き換えてください。三つ目の項目は、「リキャスト(言い直し)」と呼ばれる関わり方を取り入れたものです。間違いを指摘されると、子どもは話すこと自体をやめてしまいがちです。指摘するかわりに、正しい形をさりげなく聞かせて、自然に定着させる——幼い子の言葉を育てるとき、親が昔から自然にやってきたことでもあります。

最後の「問いかけを1つ添える」も、私のお気に入りです。AIの答えを読んで終わりではなく、子どもが自分の言葉で考えて書く番が、毎回まわってくるようになります。

年齢のきまりについても、ふれておきます。多くのサービスは13歳以上、中には18歳以上を条件にするものもあります(2026年8月時点。規約は変わるため、利用前に各サービスの公式サイトをご確認ください)。小学生のうちは、保護者のアカウントで、隣に付き添って一緒に使う。これが大前提です。

設定すれば、それで安心でしょうか?

正直に言うと、完璧にはなりません。会話が長くなると、AIはもとの癖に戻って、また俗語を口にすることがあります。そこでおすすめしたいのが、親子の合言葉にできるこの一言です。

「今の言葉は、教科書に書けるかな? 言い換えてください」

こう聞き返すと、AIはすぐに言い直します。そして、このやり取りにこそ価値があります。もとの言葉と言い直された言葉を親子で見比べれば、どの言葉が俗語で、どう言い換えると品がよくなるのかを、自然と考えることになるからです。

AIの言葉の乱れは、親子で言葉を考える教材に変えられます。

そのうえで、設定とあわせて決めておきたい家庭のルールを、三つだけ挙げておきます。

  • 1保護者のアカウントで、一緒に使う——小学生のうちは隣に付き添い、どんな会話をしたかを共有します。
  • 2答えを丸写ししない・鵜呑みにしない——AIは間違えることがあります。「本当かな?」と確かめる習慣をセットにします。
  • 3気になった言葉は、辞書や会話で確かめる——AIの答えに出てきた知らない言葉を、そのまま家族の話題にします。

まとめ——AIの言葉づかいは、家庭で整えられる

AIと子どもの付き合いは、これから当たり前になっていきます。だからこそ、どんな言葉の環境で使わせるかを整えることは、AI時代の家庭の新しい仕事のひとつになると私は考えています。

といっても、難しいことではありません。設定文をひとつ入れる。乱れた言葉が出たら「教科書に書けるかな?」と親子で聞き返す。それだけで、AIとの対話は、言葉を雑に浴びる時間から、言葉を考える時間に変わります。

そして、ことばの力そのものは、やはり人との対話の中で育ちます。AIが答えを教える時代に、なぜ「先生」が必要なのかを書いたコラムでもお話ししたとおり、表情や声の調子まで受け止めて返してくれる、生のやり取りです。私が主宰するオンライン家庭教師「まなぶてらす」にも、国語や作文、音読など「ことば」を専門にする先生たちがいます。AIを整えることと、人と学ぶこと。この両輪で子どもたちの日本語を育てていきたい——AIの妙な言い回しに苦笑いしながら、あらためてそう考えています。

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